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根管治療における歯科用CTの重要性について

2025.08.19
根管治療における歯科用CTの重要性について

根管治療(根の治療)は、歯の内部にある細い根管から感染源を除去し、再発を防ぐ精密治療です。成功の鍵は「見えないものを正確に把握すること」。そのため近年、三次元的に撮影できる歯科用CT(CBCT)の価値が飛躍的に高まっています。

CTで分かること

【複雑な根管形態の把握】

上顎大臼歯のMB2(第2頬側根管)や分岐・湾曲、石灰化の程度を立体的に確認できます。

【病変の広がりと位置関係】

根尖病変の大きさ、骨欠損の形、側枝や穿孔の有無を精密に評価します。

【周囲解剖との距離】

上顎洞との交通リスク、下顎管(神経・血管)との距離を把握し、合併症の回避に役立ちます。

【再治療や難症例の戦略立案】

見逃されていた根管、破折器具の位置、根吸収の範囲などを見極め、治療計画を最適化します。

【歯根破折の評価】

CBCTは縦破折・横破折の線状透過像や、根尖~歯頸部へ伸びる裂隙、J字型/ティアドロップ型の骨欠損といった間接所見を三次元で確認できます。メタルポストや根管充填材によるアーチファクトの影響を受けやすいため、限局FOV・高分解能(約0.1〜0.2mmボクセル)での撮影と、孤立性の深い歯周ポケットや咬合痛などの臨床所見を組み合わせて診断精度を高めます。破折線の位置・走行を把握することで、保存可否(ヘミセクション/意図的再植)や抜歯の判断、予後説明が明確になります。

患者さんにとってのメリット

CT情報により、無駄な歯質削除を避けつつ必要な部分に正確にアプローチでき、治療の予見性が高まります。結果として、治療回数の短縮、痛みや合併症の低減、長期的な再発リスクの抑制が期待できます。術前・術中・術後で所見を共有できるため、説明の透明性が増し安心感にもつながります。

すべての症例で撮るわけではありません

CTには放射線被ばくや費用が伴います。当院では国際的な考え方である「ALARA/ALADAIP(必要最小限・診断価値を最大に)」に基づき、マイクロスコープ下での精密診療と併用しながら、必要性の高い症例に限定して撮影します。具体的には、再治療、広範な根尖病変、強い湾曲・石灰化、外傷や根吸収が疑われるケース、外科的歯内療法を検討するケースなどが対象です。なお、歯科用CTは医科用CTに比べ撮影範囲を歯や顎骨に限定でき、被ばく線量を抑えやすいのも特徴です。撮影は短時間で、体への負担も最小限です。

当院の取り組み

当院では歯科用CTとマイクロスコープを用いた「見える根管治療」を実践しています。高解像度撮影と適切な線量設定、緻密な診査・診断、ラバーダム防湿やニッケルチタンファイルを用いた安全な機械的拡大、無菌的な根管洗浄・充填まで一貫して行い、長期安定を目指します。
根管治療は“診断で勝負が決まる”分野です。三次元情報を得られる歯科用CTは、その精度と安全性を大きく引き上げる強力な味方。しつこい痛みや腫れ、過去の治療で改善しない症状でお困りの方は、どうぞ一度ご相談ください。

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078-331-3034